小説

【村上春樹】アフターダークのあらすじと感想、人間の二面性の考察

アフターダークを読んで意外にも印象的だったのが、登場人物の語り口や現代的な場面でした。

高橋やカオルたちの口語体のセリフや、デニーズ、スカイラークといったファミレスが出てきました。

たぶん村上作品の主人公の、鼻につく言いまわしのようなものが苦手な人でもフラットな気持ちで読めるのではないでしょうか。

アフターダーク

作者 村上春樹
出版 講談社
初版 2004年9月7日

あらすじ

時系列に沿って場面が転換していく、深夜0時から翌朝の7時までの一晩の話です。

知的好奇心に取りつかれた高橋が、デニーズで読書をしているマリに接触して物語は動き出します。この高橋がいいやつそうに見えて、なかなか侮れない。マリとエリ、不器用で純粋な二人の姉妹を崩壊へと導いていこうとします。

一方で、マリの姉であるエリが昏睡状態に陥っている様子が現実的な話と同時並行で進んでいきます。こちらは村上春樹の特異とするスタイルの『もう一つの世界』で表現されています。

マリはデニーズで読書をしていると中国語の通訳をしてほしいと、ホテルマネージャーのカオルに呼び出されます。ホテルでは中国人女とエリート社会人の白川のトラブルにより、現場の空気は張り詰めていました。

一件落着したのち、カオルとバーで一杯飲む。高橋はバンドの練習の合間を縫って何度かマリと接触して会話をすることで彼女と仲良くなろうとします。

翌朝にはマリが留学先の中国の住所を高橋に渡して別れます。

エリの部屋のできごと

昏睡状態のエリを第三者あるいは神の視点で語っています。基本的に本編のマリの話と区切れで交互に描かれています。

だいたいが情景描写に徹しており、読んでいても退屈な部分ですね。途中『もう一つの世界』を行き来する展開がありますが、そのきっかけとなる切り口がわからなかったです。

顔の見えない男は物語の最後まで正体不明でしたが、きっと彼がキーマンになっているのでしょう。彼の正体は高橋であるということが最も有力な説のようです。

最後にはエリが昏睡状態から覚醒する兆しが描かれています。

白川という存在

物語の本筋とはあまり添っていなかったが、明らかに重要なポジションにいた白川。

彼がホテルで中国人女と暴力トラブルを起こした本人だが、普段はそんな猟奇的な姿を見せず、いたってまじめなエンジニアです。
そんな二面性を持った彼はどうしても高橋とかぶるところがあります。

一つは現実的な設定上の話として、コンビニではんぺんを買っていること。高橋もマリと公園で猫と戯れているときに、なぜかはんぺんを所持していました。

もう一つに人間的な二面性を持っていること。白川は中国人の女を殴り倒しておいた反面、仕事を順調にこなし家庭も持っている平凡な面も見られます。
対して高橋の会話の前後関係などからして、エリを昏睡状態にして『もう一つの世界』に押しやったのも彼であることが明らかです。日常的には何にも害のなさそうな高橋ですが彼ももう一つの自分を理解していました。

おそらくエリの『もう一つの世界』にいた顔のない男は現実的には高橋であり、形而上学的に白川であるのかなと僕は予想します。

エリと白川は全く接触も繋がりのかけらもないですが、『もう一つの世界』が白川の職場であることから切り離して考えることもできませんでした。

人間の二面性と代償について

スカイラークで高橋とマリが、裁判所の傍聴をしていた話から一部抜粋します。

二つの世界を隔てる壁なんてものは、実際には存在しないのかもしれないぞって。もしあったとしても、はりぼてのぺらぺらの壁かもしれない。

というか、僕ら自身の中にあっち側がすでにこっそりと忍び込んできているのに、そのことに気づいていないだけなのかもしれない。

ここでいう「あっち側」というのはつまり、人間の中に存在するダークサイドでしょう。

わかりやすく言うと、人は案外簡単に悪に落っこちてしまうかもしれないということです。それどころか、悪の方から自分自身を侵略していることに気が付いていないのかもしれないと。

話の序盤で高橋は何かを得るには相応の対価を支払う必要があることを喋っていました。

つまり彼は「知的好奇心」を満たす代償として、自分の中に潜みうる悪を自ら認めて受け入れたわけです。

僕なりにこの作品から紐解いたテーマです。

ストーリーの展開、時系列、登場人物のキャラがたっていてとても読みやすくなっています。

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